妊婦のギモンにこたえます
これってNG?
監修:石原 理(いしはら おさむ)
埼玉医科大学 産科婦人科学教室 教授(婦人科・生殖医療担当診療部長)/埼玉医科大学総合医療センター 教授
妊娠期の生活や食べ物について、
いろんな話を耳にすると思います。
でも、「それって本当?」「ただの噂?」
と思うものも……。
しっかり知識を身につけておけば、
不安になりがちな妊娠期も安心して過ごせます。
カゼっぽい症状が…薬はのんでいい?
のむ前に相談しましょう
妊娠中にカゼ薬を自己判断でのむのは危険なので、服用前に必ず医師・薬剤師に相談しましょう。妊娠後期(28週以降)ではのめない成分があります。その他の時期は短期間の服用なら胎児への影響は概ねないとされています。
インフルエンザが心配。予防接種は受けていい?
大丈夫
妊娠中は免疫が弱っているのでカゼやインフルエンザにもかかりやすい状態。インフルエンザの予防接種は妊婦でも可能なので、心配なら受けてもOKです。
歯の治療は続けてるけど、麻酔はOK?
歯科医に妊娠中であること、体調を伝えたうえで、判断してもらう
妊娠初期、後期は応急処置のみにしたほうがいいですが、基本的には歯の治療はOK。麻酔も母体、胎児に影響はないといわれています。
うっかりコーヒーを1杯飲んでしまいました。
心配する必要はありません。
でも、毎日たくさん飲むようなことは避けましょう。
うなぎが食べたい!だめですか?
大丈夫です
うなぎにはビタミンA(レチノール)が多く含まれています。ビタミンAは胎児の発達にとって必要な栄養素なので、むしろ妊娠後期では、妊娠していない時より多めに摂ることが必要です。
ただし、ビタミンAは摂り過ぎると、胎児の成長に影響を及ぼす可能性が指摘されています。とくに、レバーやビタミンAが強化された食品(ジュースやサプリメント)など、そのほか大量にビタミンAを含む食品を頻繁に食べる方は気をつけて。
生肉は避けているけど…大好物のローストビーフはあり?
できれば避けましょう!
気をつけたいのは生肉に付着しているトキソプラズマという原虫です。食肉はトキソプラズマが感染している可能性がありますので、豚肉や鶏肉はもちろん、不十分な加熱の肉(レアステーキ、ローストビーフ、生ハムなど)は控えましょう。
ケーキにお酒が入っていたみたい…食べちゃった。
心配ありません
ケーキに入っているアルコールはごく微量なので、とくに心配する必要はありません。
生卵って食べてもいいの?
なるべく避けた方がよいです
生卵はサルモネラ菌による食中毒を発症する恐れがあることから、注意が必要です。
妊娠してからなんだか毛深くなった気が……
妊娠中に体毛が増えるという方がいます
妊娠中はホルモンのバランスが変化するので体毛にも影響を与えます。なお、体毛の増加を訴える人もいれば逆に薄くなるという方もいるようです。
ちょっと太りすぎたかな…。運動してもいい?
ウォーキング程度なら問題なし!
水泳やヨガも可能ですが、マタニティスイミングやマタニティヨガを指導者のもとで行うようにしましょう。ウォーキングも無理せず行うことが大切です。
最近食べ過ぎかも…体重増加は何キロまでセーフ?
妊娠前の体重によって目安があります
厚生労働省の「健やか親子21」では、妊娠全期間を通しての推奨体重増加量を
BMI<18.5(やせ):9~12kg
BMI18.5 ~ 25(普通):7~12kg
BMI≧25(肥満):個別対応
としています。
BMI=体重(kg) ÷ {身長(m) × 身長(m)} で算出
ただし個人差があるので、あくまでも目安とし、主治医の指導に従いましょう。
男の子はおなかが縦に大きく、
女の子なら横に大きくなるって本当?
ウソ!
科学的根拠はなし。同様に、男の子だとママの顔がきつくなる、女の子だとやさしくなるも根拠なし。
妊娠線は、みんなできるの?
ケア次第で防げます
おなかが大きくなって急激に皮膚が伸びると、皮膚下の「真皮」という組織が断裂を起こし、おなかやお尻、太ももなどにひびわれたような線が現れます。これが妊娠線。皮膚が乾燥しているとできやすく、一度できると産後も残りやすいので、オイルやクリームでケアするのがおすすめ。
ヘアカラーしたいけど、何か影響ある?
影響なし
ヘアカラーもパーマも、薬剤が胎児に影響を及ぼす心配はほとんどないと考えられますが、妊娠中は皮膚が敏感になっています。そのため、薬剤がしみたりする可能性はあります。
妊婦でもおしゃれしたい! ネイルはOK?
△
ネイルをしていることが体や胎児に影響することはありませんが、ジェルネイルやアートなどがついていると、緊急手術の際など指先にモニターをつけて酸素飽和度を測るときにうまく計測できないこともあるのでおすすめしません。
体を温めたいので、半身浴してもいいですか?
長時間でなければ!
半身浴自体が悪いわけではありませんが、妊娠中は貧血になりやすいので、長時間の半身浴は立ちくらみを起こすことも。ほどよく体が温まる程度に。
マッサージやエステでリラックスしたい!
OK!でも部位に気をつけて
マッサージなら肩や首、エステならフェイシャルだけ(マシンを使うのはNG)などおなかや腰、骨盤に影響のない部位なら大丈夫。
アロマで気分転換! 気をつけることは?
妊婦向けを選んで
気分が悪くなるなど妊婦向けではないものもあるので、妊婦OKのアロマオイルを選ぶこと。なかには子宮の収縮を促進したりするものもあるので、要注意。
飛行機はいつまで乗っていいの?
主治医の先生に相談してください
飛行機に乗ること自体、健康な方では気圧の変化などについては大きな問題ないと考えられています。長時間座っていること、上空での揺れなどが心配なので、基本は安定期(妊娠5~7ヵ月)の間が安心です。
また、航空会社では妊娠している方の搭乗の可否に規定があります。この規定は航空会社によって内容が異なり、医師の診断書の提出などが必要となります。
【JAL、ANAの国内線の場合】
・出産予定日を含め8日以上28日以内の搭乗:診断書の提出が必要
・出産予定日を含め7日以内の搭乗:診断書の提出と医師の同伴が必要
ただし、念のため航空会社に問い合わせしましょう。
空港セキュリティのX線、心配です。
各航空会社の搭乗条件で確認してください
X線による放射線は微量なのでほとんど問題ありませんが、各航空会社で搭乗条件が異なりますので問い合わせてみるとよいでしょう。
旅行に誘われたけど、温泉に入ってもいい?
OK!
胎児に影響はないので大丈夫。ただ慣れない場所で滑ったりしないように十分に注意を。また、妊娠中は貧血を起こしやすいので、長時間の入浴は避けましょう。
職場は立ち仕事。いつまで働ける?
体調と相談を
しっかり休憩が取れる、休みがある、シフトがはっきりしているなど安心して働ける条件がそろっていて、体調も問題ないなら、出産手当金がもらえる産前42日前まで勤務してもいいかもしれませんが、自分が思っている以上に体に負担がかかるため、無理せず早めに産休をとりましょう。
重い荷物を持つのはNG?
個人差があるので、主治医に確認
それぞれの状況によって異なるので、注意をしましょう。おなかのはり、痛みを感じたらやめておきましょう。
スマートフォンや電子レンジなどの電磁波を浴びても大丈夫?
普通の生活程度ならOK
強い電磁波はヒトの体に影響を与えると考えられていますが、普通の生活で使用する程度であれば問題ないとされています。
うつぶせで寝てもいいの?
苦しくなければOK!
おなかが大きくなってくるとうつぶせで寝るのは苦しくなってくるので、横向きなどがおすすめ。
おなかの中の赤ちゃんに音楽を聞かせるといいって本当?
ママのリラックスが大事
妊娠20週ごろからおなかの赤ちゃんも耳が聞こえるようになってきますが、そとから音楽を聞かせても赤ちゃんにはこもったように聞こえているだけ。妊娠中に音楽を聴くといいとされるのは、ママがリラックスできて心身ともに穏やかになれるからというのが理由のよう。
お買い物は自転車派。何ヵ月までOK?
体調と相談
妊娠初期は体調が不安定になりやすく、また中期以降はおなかが大きくなりバランスが取りづらくなります。なるべく避けたほうが安心です。